天文十八年フランシスコ・ザビエルに依りて傳へられたる基督教は、非常の速力を以て我が國内に傳播し、殊に織田信長の保護奬勵を得て益盛大に赴きしが、天正十五年突如として豐臣秀吉の禁止する所となり、更に徳川氏の覇府を開くに及びて、いやが上に峻嚴の制裁を受くるに至りたりき。この間、加賀・能登二國に關係を有する基督教徒にして、最も注目に値するもの、その一をハビアンとなし、その二を高山南坊となす。前者は加賀より出でゝ飛躍し、後者は加賀に來りて活動す。その閲歴に於いても亦大なる徑庭ありといへども、我が國西教史上の重要人物たるに至りては相似たり。