翌八日、秀頼等自刄して城遂に陷れり。時に伊達政宗の陣中銃炮を集め、一齊に之を放ちしかば、東軍の諸營皆驚き、以て叛者の起れるなりとして喧騷を極めたりき。利常乃ち軍配を執りて令して曰く、我が軍皆圓陣を作り、若し攻撃を加ふる者あらば、その何人の隊たるを問はず之を敵として戰ふべし。敢へて友軍の爲す所に倣ひて擾亂すること勿れと。全軍因りて命の如くし、忽ち靜謐に歸せり。利常年正に二十三、その沈毅急に處して誤らざるを以て、大に世の賞揚する所となる。