正保二年四月前田光高の薨ぜし後、その子綱紀は六月十三日將軍家光の命によりて遺領を襲げり。時に綱紀年纔かに三歳なりしを以て、祖父利常は特にその政務を監すべきを諭されき。小松老侯の監國時代は是より初る。

今十三日爲上使酒井讃岐守（忠勝）殿・松平伊豆守（信綱）殿を以、筑前守（光高）跡職之儀、犬千代（綱紀）幼少候得共無相違被仰付候。我等老後病者、辛勞に被思召候得共可見立旨、重疊辱上意之趣難有仕合候。右之趣家中人持・物頭共外面々可被申聞候。謹言。
六月十三日（正保二年）肥前利常在判
本多安房守（政重）殿
横山山城守（長知）殿
〔越登賀三州志〕
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六月十三日、松手筑前守（光高）息犬千代（綱紀）え、酒井讃岐守・松平伊豆守爲上使被遣之。是筑前守遺跡之事、嫡子犬千代に無相違被仰付旨也。犬千代宅え肥前守（利常）招之、犬千代一同に傳上意之趣、犬千代爲幼少之間、國中仕置等肥前守可相計之旨也云々。
八月廿一日、松平筑前守息犬千代丸繼目之爲御禮登城。依之清臺（泰）院御方・犬千代丸・二男万菊丸爲御迎、杉浦内藏允被差遣之。是清臺院御方來駕、其上兩息幼少に付而御奧まで依出仕也。未上刻御黒書院出御、御上段御着座、犬千代丸御奧より被召出、筑前守遺領相續被仰付、繼目之御禮、御太力［久信］・銀子千枚・御帷子單物五十・綿千把進上之。
重而出御、松平肥前守御禮、太刀・目録・馬代銀二百枚・御帷子御單物十進上之。
〔正保録〕