利常の改作法は、先づ地味の肥瘠を檢し、産米の多寡に隨ひて租率を定め、以て毎年納租の額を不變ならしむる定免法を採用せんとしたるものにして、農民をしてこれに應ぜしめんが爲には、春初貧窮なる者に作食米を貸與して秋收の際之を返還せしめ、又産米の足らざる年には貸米によりて之を補足し、豐穰にして餘裕ある時に至り辨償せしむることゝし、特に不作の程度十分の三以上に達したる時は實査を經て減租又は免租することゝせり。かくて士人は、年の豐凶に拘らず一定の收納を得べきが故に、假令釆地に屬する農民たりとも直接に之を督促することを得ざらしめ、算用場奉行・改作奉行等の吏をして監視の任に當らしめき。是に於いて農民は誅求拷掠の苦楚を免れ、士人は收納を確實ならしむると共に督促の手數を省くを得て、共にこの法を至便なりとしたりき。