翌十年綱紀又養老の制を布き、庶民齡九十歳に達するときは、資産の貧富に拘らず之に扶持米を給し、以てその天壽を全からしむると共に、子孫をして孝養を盡くすに遺憾なからしめき。この制後世の龜鑑となり、享和・文政・天保等に屢その命を新たにして實行を繼續せり。 御領國中に罷在候九拾歳以上の男女、今度御吟味之上御扶持被下候儀、助成の爲にて無之候。老後身茂不自由に可罷在候。子孫孝行を加へ置可申候。其身も年寄、諸事ひがみ有之者に候。人者心立を嗜、子孫能く熟養を受け可申ため、壹人扶持宛被下候間、其身並子孫共此趣可申聞旨被仰出候事。 寛文十年戌八月三日 〔御定書〕