同年十二月九日齊廣は、輔弼の良臣近習用坂井小平克昌(一諱成圓)を賞して秩百石を加賜し、以て衆僚奉公の範を示せり。曰く、克昌は余の幼時より能く輔導の任を盡くせしものにして、余の人と成るを得しは實に克昌が規諫の力多きに居れり。是を以て余は彼の忠誠を嘉し、常にこれに報ゆる所あらんと欲して未だ果すこと能はざりき。而して今や克昌不幸にして疾に罹り又起つ能はずと聞く。因りて聊秩を増して多年の勤勞を慰むと。克昌初め廣式用達の職に在りしが、寛政五年轉じて齊廣の傳となり、爾後こゝに至るまで十年。齊廣の過失ある時は常に前の世嗣齊敬の言行を引きて之を諫め、自ら嚮ふ所を知らしめたればなり。