二十一日降人武田耕雲齋、永原甚七郎等三將に請ふ所あるを以て面接せんことを求む。三將これを諾し、本勝寺に至りて耕雲齋に會見せり。耕雲齋曰く、某等元來珍襲する所の一貴重物あり。今方に死に瀕して之を託する所を知らず。幸にして卿等によりてこれを一橋侯に奉るを得ば、以て意を安んずるに足る。願はくは某等の請を容れよと。甚七郎等その情を察し、之を受けて翌日慶喜に致せり。耕雲齋の託せし所、果して何物なりしかを明らかにせずといへども、恐らくはその素願を訴ふるの書なりしなるべし。