食祿の種類には、土地を以て交附する知行の外に、扶持米及び切米あり。扶持米は平士及び平士並の一部・町人等に之を與へられ、何人扶持と稱し、その一人扶持は一日玄米五合を以て算し、春渡・暮渡の二次に支給せらる。春渡は二月二日に於いて、二月朔日より九月晦日に至る日割高を、御算用場の切手にて與ふるものにして、暮渡は十月二日に於いて、十月朔日より翌年正月晦日に至る分を與ふるものとし、現品は皆堂形藏米を以て之に充つ。堂形とは城下廣坂の下にある藩の米廩なり。切米も亦玄米を以て給するものにして、新番組・足輕・小者など之を受け、俵數を以て呼び、その一俵は五斗なり。切米は正月より八月までの分を春渡といひ、御算用場に於いて三月二日より十日に至る偶數日に、祿高三分の二を交付せられ、而して春渡額の三分の一を堂形藏米とし、殘餘三分の二は、石川郡本吉・能美郡小松の御藏米を以て之に充つ。又九月より十二月までの分を暮渡といひ、十一月二日より十日に至る偶數日に、祿高三分の一を交付せらる。その中堂形米を以てするものと、能美郡寺井及び小松の御藏米を以てするものとの比例は、春渡に同じ。扶持米と切米とは總括して下行米といふことあり。知行が下行米と性質を異にするは、前者が世祿たるに反し、後者は原則として一年毎に繼續する點に在り。因に言ふ、等しく扶持方と稱するも、食祿の扶持と同じからず、別に江戸・京・大坂などの詰人、又は領國内を巡廻する者に支給せらるゝ出張手當を指すものあり。この扶持方の現米高は、之を該地方の米價に換算し、銀子を以て與へらる。その他臣屬に非ざるものを優遇する爲に、合力米を給することあり。合力米の數量は石數を以て之を算す。