凡そ百姓は、知行主たる給人に對して定納・口米・夫銀を納入し、又藩に對して正租と小物成とを上納すべき義務ある外、尚多く郡村自治に關する費用を負擔せざるべからず、之を村萬雜(ムラマンザツ)と稱す。村萬雜は萬雜帳に記入せられて、村役人之を保管し、毎年末組合頭及び百姓等を肝煎の家に會してその負擔を決議す。萬雜の賦課方法には五類あり。第一は高懸りと稱し、百姓の持高に比例するものにして、夫銀・跡々御貸米返上・諸郡打銀・用水打銀・御郡萬雜・組萬雜等之に屬するもの多し。第二は家懸りとし、村によりては面(ツラ)懸りとも稱するものにして、戸別平均に之を課し、浪人・虚無僧・乞食等に棄捐する諸費用及び出火に基づく雜費等之に屬す。第三は關係者のみより出すものにして、盜賊に關する費用、喧嘩口論爭議に關する費用等之に屬す。第四は高懸の余荷(ヨナヒ)即ち附加として出すものなり。例へば定小物成なる川役の如きは、河川より受益する漁撈者のみ之を負擔すべき筈なりといへども、若しその營業者にして存せざる場合には之を高方に割當し、又火災水害の爲に要する手傳人夫料は家懸りとするを普通とすれども、その額甚だ多きに過ぐる時は高方より余荷とするが如し。第五は高懸りと家懸りとの兩者に歩合を以て課するものにして、例へば肝煎扶持米を高懸りに三の二家懸りに三の一とし、村走りの給米は、頭振りより一戸二升當を出さしめ、その殘餘を高懸りに三のこ家懸りに三の一の比例を以て割當するが如し。