次に本町の負擔する役銀といふは、傳馬役銀・本町木戸等普請入用・上使宿普請料・横目肝煎傳馬肝煎等扶持銀・町會所牢番人扶持米等諸種の費用を含み、毎年觀音院に奉納せらるゝ神事能の費用も、亦この役銀中より支出せらる。神事能の當日本町に居住する町人の爲に特別の棧敷を設けらるゝも亦之が爲なり。役銀の外、本町よりは本町肝煎及び番頭の扶持銀を徴し、地子町よりは役銀を徴せずといへども、地子町組合頭袴摺銀・同番頭扶持銀・町會所牢番人扶持米代・地子町入用銀等を徴す。役銀等を賦課するには小間役・役間役・面割役の三方法あり。小間役は町によりてその等級を異にすれども、家屋の前口に比例するものとし、役間役は同町内に在りても、戸毎に十免・六免・二ッ五分免等の率を立てゝ前口に比例し、又面割役は家の貧富大小に拘らず、同額を徴するものとす。その費用の種類によりて、賦課の方法を異にす。 天保十年秋打銀 金澤川南町小間一間當り一匁八分五厘 役間一間當り九匁 面割一間に付五匁二分七厘 金澤木倉町小聞一間當り六分二厘 役問一間當り二匁八分 面割一軒に付一匁六分 〔石川縣租税史〕 地子役とは宅地租の義にして、七ヶ所たると否らざるとに拘らず、一般に地子町に課せられ、その額戸一ヶ年に銀三匁内外なり。地子町に次ぐものには寺社門前地といふありて、その地子は慣習によりて、或は之を寺社に納附し、或は之を藩に徴せらる。税額は略地子地に同じ。その他相對請地と稱するあり。士人又は町人が百姓地を借用して屋敷としたるものにして、農村に對し毎歳地子米を支拂ふべき義務を有す。但しこの地子米は、時價に隨ひ代銀を以て支拂ふものとす。相對請地は初め郡奉行の管轄たりしが、後漸く町名を附して町奉行の支配に移されたるも、尚地子米を農村に與ふる慣習のみ舊の如く存し、農村は村高に對する租米を上納したりしなり。士人の邸宅は、藩より下賜せらるゝものたるが故に、之を賣買するの權利なく、地子役を上納する義務を有せず。本町に在る町人の宅地は、拜領地にあらざるが故に賣買することを得るも、亦地子役を負擔せず。 一、金澤本町より人夫一萬人。地子町之内に七ヶ所と申名目之町御座候、右七ヶ所より二千人。都一萬二千人御定之町夫高、毎歳割場奧書切手を以、夫々懸渡申候。御定之夫出高、不足有之年者一人に付五分宛之圖りを以、翌春諸方御藏に銀子上納爲仕候。出過有之候得者、是又右五分之圖を以小拂所より銀子請受申候。但七ヶ所之外、地子町より人夫指出不申候。 一、本町より、爲役銀並人夫銀、毎歳七十貫目計取立申候。此銀子を以、傳馬役銀、觀音舞臺等普請並能入用、本町木戸等普請入用、町役者等町役余荷、上使宿普請料、横目肝煎傳馬肝煎等扶持銀、町會所牢番人扶持米等、其外往來通行之騨人足銀等、都而驛役に拘り候入用銀に拂申候。此請拂之儀者、於町會所横目肝煎主付、一ヶ年切に請拂之勘定、町年寄共見屆申候。地子町より役銀と申は取立不申候。地子銀毎歳五十九貫目餘、外に御家中請込地子銀三十五貫目計、都合九十四貫目計、御普請會所指圖之通、於町會所地子肝煎共取立、諸方御土藏え上納仕候。右七ヶ所之分者、地子銀・人夫銀ともに取立申候。 一、本町より毎歳役銀之外、肝煎・番徒(頭)扶持銀三十一貫目余、於町會所横目肝煎取立、右肝煎等え夫々相渡申候。組合頭者、其町切に而町役指除候而、別に扶持銀は無御座候。但地子肝煎給銀は、小拂所より相渡り申候。組合頭袴褶銀並番徒扶持銀、其外地子町入用銀等、毎歳二十三貫目計取立、夫々相渡申候。 一、犀川・淺野川兩橋懸直り候節、人足銀半分、本町並七ヶ所より指出申候。但七ヶ所之外地子町よりは指出不申候。 戌三月 〔本町地子町地子銀町役定〕 ○ 覺 一、五十五貫目計本町役銀一ヶ年分(附箋本町家數二千四百七十軒計) 此分傳馬役銀等、其外驛役に拘り候入用銀、本文之通。 一、十六貫目計同人夫銀 此分町夫一萬人諸役所渡り賃銀、並往來通行之驛人足賃引足銀等に拂申候。 一、二十貫目計本町肝煎扶持銀 一、十一貫目餘同番徒二十六人扶持銀 〆百二貫目計 但免之高下、家之大小を平均、大體間口四間計之家一軒に付年中五十三四匁計。 一、二貫三百目計地子町之内七ヶ所より人夫銀取立高 但七ヶ所家數九百五十軒計に割り、大體犬小平均三間口計之家一軒に付年中二匁四分計。 一、八貫八百五十目地子町番徒三十人給銀 一、十三貫目計同組合頭袴褶銀 一、一貫二百目計町會所牢番人扶持米代、地子町入用銀等 〆二十三貫目計 但地子町惣家數一万六百軒計に割り、一軒に付年中二百二三十文計。 戌三月 〔本町地子町地子銀町役定〕