職に懸る上納銀は即ち商工業税なり。商工業には株立なると無株なるとありて、烟草屋・豆腐屋・酒屋・質屋・蠟燭屋・藥種屋・製造器械を備ふる油屋等は株立たるが故に、營業者に定數を有し、呉服屋・小間物屋・紙屋・菓子屋・鍛冶屋・室屋・請賣油屋・紺屋等は無株なるが故に、自由に營業することを得るものとす。職に懸る上納は、之を營業とする家に對しては冥加銀を徴すると、取扱又は製造額に比例して運上銀を課するものとあり。蠟燭役・油役・煙草役・豆腐役・室役・紺屋役・鍛冶役等は前者に屬し、絹判賃・布判賃・魚問屋口錢・銀座封賃・酒屋役の如きは後者に屬す。その他小賣業者たる米屋、運送業者たる三度の如く、株立にして無税なるもありき。 町人の納税義務に就いては略上述せるが如し。而して士人に在りては年頭御禮・初御目見・跡目相續・加増知拜領・新知拜領・叙爵被仰付・役儀被仰付・縁組御禮・子弟被召出・隱居御禮等の場合に當りて、定額の太刀馬代・時服料・肴料・鳥目等を藩侯に献上して謝恩の意を表することありといへども、是等は御禮錢又は献上物と稱し、藩侯内帑の收入となるものにして、租税とその性質を異にす。役銀及び出銀と稱するもの、その趣旨藩侯を輔け、又は諸士互助の爲にするものにして、純粹なる租税にはあらざるなり。