士人にして有位の者は、朝儀に列し又は神前の祭式に與る時、特に朝服を用ふることあり。この場合に於いては、衣冠束帶若しくは狩衣・指貫・風折鳥帽子を着し、下衣には白無垢を用ふ。太刀は或は之を帶し、或は小姓をして之を捧げしむ。その他の場合に於ける式服は、階級によりて大紋直垂・袴・梨子打烏帽子又は素襖・袴・折烏帽子を用ひ、着付は平熨斗目・縬熨斗目又は無地熨斗目とす。熨斗目は厚地の絹にして、織色に染め、家紋を描き、腰廻り及び袂を別色の織交ぜとするも、無地熨斗目は腰と袂とに織交ぜなきものとす。 通常禮服には、熨斗目・長上下又は熨斗目・麻上下を用ふ。上下(カミシモ)の地質は絹なるもあれども、禮裝の場合に在りては殊に麻上下たることを布告せられ、その布告なきときは絹地を用ふるも妨げなし。但し藩末儉約令の屢發せられしより以後、殆ど絹上下を用ふるものなきに至れり。上下の染色には茶小紋・褐小紋等なきにあらざれども、禮服には常に淺黄小紋に限られ、凶事に際しては特に褐染を用ふべしと布告せらるゝことあり。着付は、大禮に非ざる限り、熨斗目に代ふるに紋付兼房染の小袖を以てし、その他の色紋付は略裝とす。凶事に際し白色無紋の上下を用ふることあり。この場合の着付は亦白色無紋とす。