四月十六日、城内東照宮に於いて祭禮を執行せらるゝを以て、家中・町方の男女共に參拜を許さる。留守居組付與力及び歩横目等警戒の任に就き、社殿の内外には足輕を配置せらる。十七日祭禮又前日の如し。 五月朔日、出仕例の如し。 五月五日、端午の佳辰なるを以て、物頭以上出仕して藩侯に謁す。その服裝は帷子・麻上下を用ふ。この日城内に菖蒲兜・菖蒲弓・幟等を陳列し、武家の子弟に之を觀るを許す。 五月十五日、出仕例の如し。 六月朔日、出仕例の如し。この日は氷室の朔日と稱し、江戸の藩邸より氷を將軍に献ず。この氷は、金澤に於いて二重の桐長持に容れられ、八枚肩の脚夫により江戸に急送するなりといふ。藩侯も亦氷を喫し、近臣にも之を賜與せらる。 六月十五日、出仕例の如し。 七月朔日、出仕例の如し。 七月十五日、この日孟蘭盆なるを以て、朔望恒例の登城を缺き、前後三日の中に郊外野田山なる藩祖の墓所に參拜す。年寄にありては、切籠燈籠をその墓前に捧ぐ。 八月朔日、出仕例の如し。 八月十五日、出仕例の如し。 九月朔日、出仕例の如し。この日より袷小袖・麻上下を着す。 九月九日、重陽の佳節なるを以て、物頭以上の諸士出仕拜賀す。本日以後、服紗小袖・麻上下を着し、足袋を穿つ。