この月、明年正月年頭御禮の際藩侯に献上すべき太刀馬代及び鳥目を、頭役以上に在りては直接奏者所に、その他の平士は頭役の家に持參し、頭役之を纒めて奏者所に納む。 年内立春の年に於いては、この月追儺の式あり。當日城代以下定番馬廻頭等、皆熨斗目・麻上下を着し、七ッ半時までに登城す。但し節分の新年以後にある時は、服紗小袖・麻上下を用ふ。年男は常に熨斗目・長上下を用ひ、その他の關係者は服紗小袖・麻上下を着く。日暮に至りて横目より儀式開始の通報ある時は、年男臺所に出で、土地之間に於いて與力より桝に盛りたる炒大豆を受取り、同心小頭をして之を捧げしめ、御次より内は坊主をして運ばしむ。城代・定番馬廻頭・留守居物頭・定番馬廻番頭等之と相伴ひ、坊主小頭は手燭を携へて先導す。炒大豆を撒く各室は、御居間・同二之間・御膳所・奧書院上段・小書院上段・大廣間上段・表式臺・柳之間及び臺所とす。豆撒の儀終る時は、年男臺所に於いて與力より別に炒大豆を受取り、坊主をして城代の前に運ばしめ、城代以下坊主頭に至るまで之を頂戴す。次いで年男は城代より綿二把を賞賜せられ、土地之間に至りて吸物・取肴・酒及び炒大豆を受け、臺所奉行も亦同室に於いて炒大豆のみを頂戴す。 城中に於ける儀式は、略前節に述べたるが如し。而して民間の年中行事は、別に之を叙するを利便なりとす。