定 一、父子有親、君臣有義、夫婦有別、長幼有序、朋友有信。學校のをしへは此五倫に止りて、人々其身に行ひ、各其職分のなすべき事をおこたらず、つとめはげむべき事。 一、師長に被仰付候人々は、其役不輕候へば、先其身を正しく心得教導すべし。學徒志の淺深、才器の甲乙にしたがひ、ねむごろに諭すべし。假令不器の徒たりとも、丁寧に教誨すべし。然れども強て教に不從の輩は學校御役人え可相達事。 一、習學の輩は貴賤となく、學頭・助教等の教導に從ひ、無怠慢勤學し、右職分を全く心掛候儀肝要たるべき事。 一、讀書は聖賢本傳を本とし、諸賢諸儒正説をも兼備し、又本朝先哲の書も其正しきを撰で用ゆべし。異端邪説等聖經に害あるの書は一切禁ぜられ候。此外歴史・諸子・詩文集等も、得手にしたがひ會讀等すべし。和學・天文・暦學・算法・醫學等は、別に其師を被仰付候事。 一、諸生を御養被成候者、三年にて學業上達不仕者は學校を出すべし。師長の教に不從者は、三年に不滿とも差置まじく候。若今暫相學び學業すゝみ可申躰の者は、三年を過候とも御養可被成候。毎年諸生之學業等考へ試み、相應の賞罰あるべき事。 一、惣て禮義正敷心得、言語進退著座之次第等急度愼むべき事。 一、講書聽聞中、或は無益の雜談、或は無用に座を立、或は扇づかひ等、堅仕まじき事。 一、師長の優劣、講述の善惡批判仕間敷事。 一、才器學力有之も、無禮緩怠之所行候者學校を出すべき事。 一、不忠不義の輩、其斷なく猥に學校え入候者、早速追しりぞけ可申候。若先非を悔、習學相望者は、其實情をとくと見屆教導すべき事。 一、學頭一人、經傳を講じ、學者を教導し、學徒才徳之考試課程を可掌事。 一、都講一人、助教・讀師等講述之當否を論じ、曁學校の法式をたゞすべき事。 一、助教七人、諸書を講述し、諸生等教導等の助をなすべき事。 一、讀師八人、句讀を授け、手跡を學ばせ、幼學の指南第一にいたし、且又講述もすべき事。 一、諸生之内より、毎日二人非番をたて、講堂等之掃除、筆硯等之飾、且又火元等をも見廻べき事。 右之通可申渡旨被仰出候也。 寛政四年 〔日本教育史資料〕 ○