辨書之式 子曰。巧言令色鮮矣仁。 章意此章は表をかざり候心有之候へば、本心の仁徳はうせ候と申事を示され候にて候。 字訓巧言とは詞を品よく申なし候事、令色とは顏色をいかにも尤らしく取繕ひ候事のよし。 解義凡そ人は内心の見事なるやうにのみ心掛たく候。左なくして口上を上手にいひなし、顏色を尤らしく取繕ひ、外をかざりて人の氣に入らんとする時は、是則欲心の盛なるにて、本心ははや失ひたりと申すべし。仁は人の本心を失ひたる人に仁徳のあるべきやうなし。聖人の御言葉ゆるやかなれば、鮮と宣ふうへは絶てなきといふことゝ心得べし。 餘論剛毅木訥近仁と申す言葉に引競べて見候へば、巧言令色なる人の心おそろしきこと知りつべし。されば人はかりにも外をかざりて人に悦ばれんと思ひ、大切の本心を取失ひ、見苦しき心持まじき事肝要なり。 月日 〔日本教育史資料〕 職員及び學生の昇降時間は、句讀師及び入學生に在りては朝五ッ時に出席し、晝九ッ時までに漸次退出す。都講及び助教は、初め朝四ッ時に出校せしが、天保十年以後には五ッに繰上げられ、當日講釋の都合により晝後八ッまでに順次退出することゝせり。佳節及び朔望は休日とす。