天保學政修補の時又町醫師を開業せんとする者に封し、明倫堂に於いて試驗を施行するの制を定む。是より先、町醫師を開業せんと欲する者は、その師家たるものゝ添書を得て、願書を町會所に提出せしめ、而して町會所の横目・肝煎等之に對して醫術の試問を爲し、その結果の優劣によりて許否を定めたりしなり。然るに近時甚だしく出願者の數を加ふると共に、技術の頗る不熟練なるものあり。殊に彼等の師家たるものにも優劣の差別ありて、悉くその證明する所を信用し得べからざるのみならず、醫術に對して全然門外漢たる横目・肝煎等の試問も亦何等の權威あるものにあらざるを以て、江間雀々翁・丸山徹叟兩醫の意見に基づき、自今町醫師たらんことを出願するものある時は、町奉行より明倫堂の督學に傳達し、學校に於いて藩の御醫師等之を試問し、その成績を學校主付に報告して、合格と不合格とを決定することゝしたりき。