青木秀枝、通稱新三郎、世々藩の料理人なり。秀枝江戸に出で橘冬照に就き、皇學を修め國歌を學び、又田中躬之に從ひて國史・律令及び萬葉集を研鑚し、安政四年明倫堂國學内用に加へられしが、後元治元年の變に罪を獲て斬に處せられき。年三十二。 山時鳥 矢田の野を夕こえ來ればあらち山峰の木蔭になくほとゝぎす 覊中落葉 旅衣なれしたもとにちる木の葉はゝそときくも戀しかりけり 大野木克敏、通稱仲三郎、國學を高木有制に受け、又和歌を學ぶ。平生勤王の志厚かりしが、元治元年の變に罪を獲て死に處せらる。時に年二十二。 路卯花 うの花のさき出でしより玉鉾のみちは闇にもまどはざりけり 今樣 涼みがてらに、我庵の、窓の戸あけて、夏の夜の、月待ち居れば、月ならで、うつる螢の、かげもよし。