以上列記せる外、藩末に至りて漸く名を爲し、主として功を明治時代に成したる國學者數人あり。今こゝに之を附記す。 前田慶寧、第十五世の藩侯なり。 月照松 あきのよはふけゐの浦の玉松にかげこそあらへ月のしら波 時鳥數聲 時鳥しのぶのをかの名をよそに千聲もゝ聲なきしきるなり 前田利嗣は、慶寧の子なり。その歌道は之を叔父前田利鬯に受く。 澗底泉 つゞらをりくだりてみれば谷底にわきて流るゝ水もありけり 雨夜月 降くらす秋の雨夜のきり〲すなく音しめりて聞えける哉