神保立雄、通稱を磯次郎といひ、文政十一年を以て生まる。立雄頗る國典に通ぜしを以て、明治三年金澤藩命じて皇學副教師となし、四年文學訓導に進め、亦皇學を教授せしめき。置縣の後、五年菅生石部神社に奉仕し、八年白山比咩神社禰宜となり、十年權宮司に進み、十四年八月二十七日歿す、年五十四。 澗水 しづかなる谷のこゝろもながれては岩根にひゞく水のしら波 葉密鳴蝉稠 みな月の照日おさふるくすのきの千枝よりしげき蟬のもろ聲