遠藤高璟の畫ける泥繪一葉は、現に大阪市の三隅貞吉氏によりて所藏せらる。その裏面には、『文政四年巳初夏望考圖半日成。遠藤高璟圖。此圖は心積の觀積法也。即未三體の寫法不考以前、於竹澤御殿御普請御用中遠望の躰を見取り寫之の草圖也。』と記され、兼六園内より遙かに河北潟を經、能登の翠微を望むの状を描けり。畫樣泥繪なるも、長崎式にあらず又江戸式にあらずして、高璟獨創のものたることは鑑識家の等しく認むる所なり。