民山燒は温健にして質實なる陶磁なり。是を以て古九谷燒の如き韻致なく、木米の如き怪奇なしといへども、加賀の陶磁史にありては、中堅たるべき地位を占むるものにして、能く製磁事業の命脈を維持し得たる功績は決して之を沒すべきにあらず。世人或は秀平の彫刻に於ける技能が、精は即ち精なるも美術としての眞髓を發揮し得たるものにあらざるが如く、民山燒に在りても僅かに乾山を模して遂に及ぶこと能はざりしものなりとするものあれども、此の如きは秀平の眞意を解せざるものにして、彼には模倣の念なく衒耀の氣なく、唯國益を起し民福を計らんとするを以て企業の大目的としたるなり。