鑄物師が御藏氏の取締を受けたることは、啻に中居鑄物師にのみ限らるゝにあらず。されば金澤鑄物師たりし村山四郎兵衞の如きも、正徳中上京して鑄物師職たるの許可を得しこと、その家傳の文書に見えたり。他の諸氏に在りても皆之と同一の手續を經て開業したるなるべく、唯今日に在りてはその交書を見ることを得ざるのみ。 加賀國金澤鑄物師四郎兵衞、實者能登國中井(居)村鑄物師新左衞門子孫也。今度致上京先規之家職相勤處神妙之至也。抑鑄物師所職永繁榮、可爲其家再興。仍任先例状如件。 禁裏諸司從五位上藏人方 正徳四甲午十一月朔日御藏眞繼刑部少輔珍弘在判 加賀國金澤鑄物師 村山四郎兵衞 村山徳松 小工九兵衞 小工權兵衞 〔金澤鑄物師傳書〕