十村の裁許する組内の五ヶ村を連合したるものを、通常五ヶ村と稱す。事故の稍重大なるものあるときは、五ヶ村の肝煎集合して之を協議す。例へば切高禮米代銀を定むる場合の如き是なり。諸村互に助力を要するときも又五ヶ村之を爲す。但しその名は五ヶ村と稱するも、便宜に從ひて四ヶ村又は六ヶ村等なることなきにあらず。 井肝煎は用水の肝煎にして、一人又は二人を置く。井肝煎とは、堰肝煎を誤れるものゝ如し。能登には井肝煎なく、加賀・越中にのみ存す。但しこの二國にありても井肝煎を有する用水は古來一定し、小規模の用水には之を置くことなし。組合頭又は長(オトナ)百姓中より選定せられ、下流村役人同意の願書を提出して改作奉行の認可を受く。井肝煎の扶持米は、流域の諸村より水の當り高に比例して徴收す。 組合頭は村の大小により二人乃至六人ありて、肝煎の助手となるものなり。故に相役ともいひ、組裁許の十村によりて任命せらるといへども、宿立・町立の所に在りては郡奉行の認可を經ざるべからず。組合頭は一定の給銀・給米等を受けず、その奔走盡力したる程度を計り、村萬雜日懸り銀・余荷より之を支出す。 繩張人は測量の技術に長ずる者にして、檢地を行ふに當り廻り分間繩入等のことを爲すものをいふ。御扶持人十村は繩張人を郡中より選定し、改作奉行及び定檢地奉行に申請し、定檢地所より任命す。繩張人は平常給銀を受くることなく、本檢地及び内檢地の際使役せられ、之に對して日懸り銀を受く。繩張人は又田地割に從事し、田地割の算者となることあり。