村方にして隣村と地元を交換する時は、之を替地と稱す。兩村の領犬牙錯綜し、而して地味に厚薄なき時、互に示談して同歩數を交換せんと出願する時は、組裁許の十村及び御扶持人十村等立會ひ蹈査して繪圖を作らしめ、之に裏書を加へて許可を與ふ。若し地味に厚薄あり、歩數均しからずといへども、收穫の量相同じきを以て替地せんことを出願する者あるも、決して許可せらるゝことなし。 新開とは山野湖沼等惣べて不毛の地を、新たに開拓して田畑としたるものをいひ、之に對して改作法施行以前より存せしものを古田(コデン)と稱す。新開に在りては、初年・次年の收穫は全く作徳たらしめ、三年・四年に在りては内檢地極高を定めたる上、圖免(ツモリメン)の半額を藩の收納とし、五年に至りて初めて圖免全額を收納するを法とし、事情によりて特に年限を伸縮せらるゝことあり。新開を爲すには、居村たると他村たるとを問はず、開拓すべき地あれば郡の新田裁許に出願し、新田裁許より改作奉行に移牒して許可を受くるを要し、決して私かに之を爲すを許さず。 鹿島郡直津村新開水帳鹿島郡西湊村林内十郎氏藏 鹿島郡直津新開水帳 新開には、請高新開・仕法新開・御仕立新開・圖免新開・一免下新開・定免新開の種類あり。請高新開は、豫め高何程と見積りて出願許可を得たるものにして、既に圖免(ツモリメン)を以て納租するに至れるものも、未だ内檢地を經ざる前に在りては、皆この名を以て呼ばる。仕法新開は、古より開拓の容易なる地は既に開拓し盡くしたるを以て、文化二年作業の困難なる地に在りては、十ヶ年以内に開墾せしめ、若しその期間に終らざる時は地元を沒收し、他人に命じて開拓せしむることゝせしものをいふ。御仕立新開は、初め御手前開といひしものにして、初より地元を藩有とし、その開拓費を改作所より支出するものをいふ。天保中仕法新開・御仕立新開皆共に請高新開中に加へらる。圖免新開は天保中より極高新開といひしものとし、内檢地を經て草高の決定する時はこの名目となる。勿論内檢地のみにて本檢地あることなし。一免下新開と定免新開とは、天保中合して定免新開といへるものなり。極高新開の年月を經て地味改善せられ、村免よか免一ッを低下したる定免となり、若しくは村免と同一に定めらるゝも、年々の豐凶によりて引免を附せらるゝが如く、何れにしても免相の定りたるものをいふ。新開の多數は、皆年々見圖りの免を以て納租するものとし、而して之を定むるは新田裁許の任務なり。