田地割を施行したる後、地味に差等ありて、持高に對する收穫の比率に不同を生じたる時は、五年目・七年目若しくは十年目に田地と畑地とを鬮として割替へ、地元の平均を計ることあり。こは村方のみにて行ふものにして、組裁許の十村にも屆出づることを要せず。能登にはこの例多し。 田地割を行はざる村方にありては、百姓所有の地元相平均することなく、一定の區域に一定の地主ありて、年月を經るとも交替することなし。之を坪持と稱す。田地割を行ふ村方に在りても、その中の一兩人が竿をはづし、坪にて一定の地を有するものあり。坪持は凡べて法の禁ずる所にして、その發覺するときは直に地割を命ぜらるといへども、敢へて嚴重の所罰を受くることなし。故に天保中又屢田地割を促がしゝに拘らず、能登・越中には尚坪持を存せり。坪持の村方に田地割を行ひて平均するときは、各人に利不利あるを常とす。即ち甲の十石高は歩當り廣く且つ地味良好に、乙の十石高は歩當り狹く地味劣惡なるが如きことあればなり。因りて之を避けしめんが爲、歩平均・高平均・尻目打又は作徳平均の法によりて地元を平均せしむ。この四種の方法は、百姓の協議によりて何れを採るも可なりといへども、改作所より命じたる田地割にありては作徳平均の法に據らしむ。