山林を伐採する時期は、地方と樹種とによりて同じからずといへども、概ね春秋の候に於いてし、その深山幽谷にあるものは、消雲の後にあらざれば着手する能はざるが故に、多く夏季に於いてせり。伐探の方法は根伐を專とし、器具には斧・鉞・大鋸を用ふ。民有林中、柴の採取は三四年毎に於いてし、薪材は七八年乃至十二三年に於いてし、炭材は二十年乃至三十年に於いてせり。 伐木を運搬するには、多く人馬の勞力によるといへども、水利の便ある地方に在りては、筏流又は木品流を以てせり。木品流とは、短材に造りて流下せしむるをいふ。その他雪中陸地の運搬に橇をも使用せり。津出はその都度出願して許可の證印を得、浦役人木材の數量を調査し、その價格に從ひ凡そ百分の一の口錢を徴し、之を御算用場に納入するを要したりき。 大聖寺藩の藩有林に關する制度は略加賀藩のものと同じ。但し公地を農民に貸與して仕立てしむる林ありて、こゝに生産する林木は、藩の極印を受けたる後自由に之を伐採するを許されたり。此の種の林地は舊來不毛の沙地なりしを選びたるなりといふ。民有林も亦之に同じく、用材となるベき木種を伐採する爲には、檢査を經て極印を受けざるべからず。而して若し藩用の爲に民有の林木を徴する場合には、相當の代價を交付するを例とせり。藩有林木が藩自身の目的に使用せらるゝことは勿論なりといへども、特に春季に在りては家作松、秋季に在りては稻架松と稱し、その員數を限りて無償又は低價に拂下ぐることありき。