天正梅鉢大判金。梅鉢紋を刻するが故に名づくといへども、その詳細を知るべからず。寛文元年に一枚銀四百五十七匁替とし、同八年に銀四百三十匁替とし、同十九年に銀四百五十匁五分替とし、正保三年銀四百五十一匁替と記されたるもの、皆この大判なり。 慶長梅鉢大判金。普通判金形にして、上方丸の内に六曜と見らるゝ梅鉢あり。その下に慶長八・五月極と二行に分書し、下に一兩・用介花押とあり。その用介花押は墨書なるべく、全面に呉蓙目あり。縱五寸二分、横三寸一分。後世の大判には十兩と書すれども、これには一兩とせるもの注意すべし。 慶長梅鉢小判金。小判形にして、上に丸内六曜の如き梅花、その下に慶長□・正月極と分書し、次に一兩、次に用介花押とあり。表面のみに呉蓙目を施す。縱二寸五分五厘、横一寸四分、重四匁四分。 牛舌大判金。菱形の稜を丸くせる如き形にして粗き鎚目あり。中央に角の内に寶字、上下左右に扇面形の内に六曜と見ゆる梅鉢紋あり。裏面下部に丸の内金字、丸の内榮字の極印あり。鎚目なし。縱四寸四分、横二寸七分。 牛舌小判金。長楕圓形の如く、表無紋にして裏に鎚目あり。縱三寸三分六厘、横一寸、重十四匁六分。 牛舌小判金。石斧の如き形をなし、表面中央に角の内に寶字、上下左右に桐紋あり。半月形の鎚目を打つ。裏面丸の内に本・卜・榮・佐の極印と花押とあり。縱三寸四分、横一寸八分、重十一匁七分九厘。 雁金小判金。細長楕圓形にして表裏共に雁金(カリガネ)二羽を重ね刻し、表面のみに鎚目あり。縱四寸五分、横一寸五分。 雁金大判金。細長楕圓形にして、表面のみに首なき雁金二羽を並べ刻し、鎚目を打つ。縱三寸四分、横一寸五分。 上字小判金。長楕圓形にして、表面の上下に、上字を尻合せに刻し、鎚目あり。裏面には表面の宇形を裏向に刻す。縱三寸五分、横一寸五分。 上字小制金。楕圓形にして、表面に鎚日あり。表面中央の上字を裏面に於いては裏向に刻す。縱二寸九分、横一寸三分。 加賀小判金。普通小判形にして、表面上部に桐紋、その下に楕圓内に一兩、次に楕圓内に加賀、次に方形内に座とあり。呉蓙目あり。裏面は丙・天・つ・▽・角中に大等の刻印あり。縱二寸七分、横一寸六分、重四匁一分。 梅鉢小判金。普通小判形にして、上部角内に一兩、その上と左右の下に丸内に六曜の如き梅花、下部に並べて角内に才二郎、角内に用介花押とあり。全面に呉蓙目あり。縱二寸四分、横一寸三分。 花一分金。圓形にして、表面に花字の下に三ッ巴あり、裏面に一歩の字あり。鎚目等なし。徑五分五厘、重八分。 梅鉢小判銀。小判形にして、上下扇面形の内に劍梅鉢、中央角形の内に一兩とあり。呉蓙目あり。縱二寸四分、横一寸二分、重三匁八分又は四匁三分。 井筒小判銀。小判形にして、中央角内に一兩の文字あり。上下に斜なる井筒あり。呉蓙目細密にして、縱二寸四分、横一寸三分とし、重三匁八分六厘・三匁九分八厘又は四匁のものあり。 菱小判銀。小判形にして、上下に各松皮菱の内に四瓣の花形あり。中央角の内に壹兩の文字あり。呉蓙目細密にして、縱二寸四分、横一寸三分、重四匁三分五厘とす。 南鐐小判。小判形にして、上に南鐐、下に壹兩の文字あり。呉蓙目亦細密なり。縱二寸四分、横一寸三分、重四匁一分。 花降一兩銀。稍長方形にして隅を切り、表面中央上部に角の内に花降、下部に角の内に壹兩の文字あり。四隅に丸の内に桐紋あり。裏面中央下部に次郎兵衞・彦四郎極と分書し、その他無地とす。縱二寸二分五厘、横一寸九分、重四匁三分。 花一分銀。長方形にして、表面に花の字と三ッ巴、裏面に一歩とあり、重一匁のもの。又一種、同形二重輪廓、表面に花[壹分]又は花[一分]とあり、裏面無地、重一匁のもの。又一種、同形二重輪廓、表面に花分となり、裏面無地、重六分のもの等あり。以上縱五分五厘、横三分五厘。 梅鉢一分銀。長方形にして、二重輪廓中に六曜の如き梅鉢と一分の字あり。裏無地。縱六分、横四分、重八分八厘。 南鐐一分。長方形にして、兩面共周圍に小星を並列し、その内に輪廓あり。表に南鐐、裏に一分とあり。縱六分、横三分五厘、重一匁。天正中長氏の作る所なりといはる。 花降大豆板銀。楕圓形にして、表面に三巴と桐紋、裏面に松皮菱の中に花形あり。縱六分、横三分五厘、重四匁。 花降大豆板銀。圓形にして、表面角内に花降の文字あり。徑三分・五分又は六分、重一匁より四匁三分に至る。 花降丁銀。稍長方形にして隅を切り、周邊に雷紋あり。中央に角の内花降及び角の内拾兩の文字あり。この二つの角形の上下左右に、五邊の唐環中に突羽根形の如きものあり。唐環形と唐環形との間は、箪笥の環の如きもの二個にて連續し、全體にて楕圓状の輪廓をなす。裏面無地。縱三寸五分、横三寸、重四十三匁。前田利長の時造る所といふ。 花降丁銀。隅切長方形にして、表面の紋樣前者と同じく、花降及び壹兩の文字あり。裏面無地。縱二寸二分五厘、横一寸九分五厘、重四匁三分、亦前田利長の時造る所。 花降丁銀。隅切短册形にして、表面中央に花降百目、裏面下部の楕圓中に彦四郎とあり。縱五寸、横一寸四分、厚二分。 花降丁銀。隅切短册形にして、表面上部に左右直線上下三弧線より成る輪廓の内に花降、下部角の内に拾匁とあり。裏面下部楕圓の内に彦四郎とあり。縱三寸三分、横一寸三分五厘。 花降桐極印銀。稍長方形にして、隅を圓くし、表面上部に花降、下部に壹枚とあり。四隅圓形の内に桐の極印あり。裏面四隅の極印亦同じく、中央下に次郎兵衞・彦四郎極と分書す。縱三寸四分、横二寸七分、重四十三匁。 花降桐極印銀。短册形にして、兩面とも上部・中部・下部に、丸の内桐紋の刻印を四個宛横列して帶とす。表面上中部の帶の間に角内に花降、中下部の帶の間に次郎兵衞・彦四郎極と分書す。裏面下部の帶の間に角内に百目の極印、その下に花押あり。縱五寸三分、横一寸一分。 花降菊紋極印銀。隅切長方形にして、表面四邊の中央と四隅とに簡單なる雷紋あり。中央上部に五邊の唐環形の如きものあり、次に角内に花降とあり。次に左右より唐環形を相對せしめ、次に角内に壹枚とあり、次に唐環形を最上方の唐環形に對せしむ。裏面は無地にして、左方下部に角の内に彦四郎・極印と分書す。縱三寸三分、横三寸一分。又は縱三寸五分、横二寸八分。重共に四十三匁。 上字竿銀。棒状にして、周圍縱に三列の小星あり。上部一ヶ所に上字あり。竹流といふもの即ち是ならんと言はる。長二寸二分、竿の徑四分。 上字圓銀。圓形にして、表面の周邊に小星の列あり。上部に上字あり。圓の徑一寸二分。 花降切銀。稍長方形にして、全面に圓内に具字、角内に座の字、楕圓内に宝の字の極印を捺す。隨意の大さに切斷して使用するものにして、縱三寸九分、横二寸四分。