米場の組織は、集所座主・米仲買・銀仲の三機關より成る。座主に就きては前に述べたるが如く、取引に要する一切の設備を供給するもの、仲買は客筋より注文を取り自己の計算を以て賣買取引を行ふものとし、銀仲は米切手を擔保として資銀の貸借を媒介するものとす。仲買の中より米仲買組合頭及び口錢改役を選任して、仲買の取引及び賣買の納税に關する事務を掌らしめ、銀仲の中には銀仲組合頭ありて同業の行動を監督す。又別に米仲買肝煎といふものあり。米仲買肝煎は貞享二年の創置とし、その數初は二人なりしが後三人に増加し、町奉行より任命せられたるものにして、米場に關する人事の取締監督を掌る。集所にては陰役といふ者を使役して不正仲買及び脱税者等を探偵し、若し違背者を發見する時は之を仲買肝煎に通知して處分を要求せり。 長田屋文平 二俣屋七郎左衞門 木綿屋新兵衞 荒木屋三郎左衞門 宮元屋又五郎 右之者共、今般僉議之上、口錢改役申付候條、集所におゐて、中買ども米商賣口錢自分帳、於役場毎日見屆、集所之帳面に引合、口錢相洩不申樣可裁許事。 一、中買共之内不相應之商いたし、無心許躰及見聞候者、早速仲買肝煎迄以内分可申達事。 丙午十一月(天明六年) 〔金澤米穀取引所沿革〕