客筋が銀子を持參して、先に質物として差入れたる米切手の受出しを請求する時は、米仲買は銀子を領收し、之を取次銀仲に交付す。然る時は銀仲は之に對し、返濟銀を受取りたるを以て後刻質物米切手を引渡すべきことを契約したる證書を米仲買に交付し、次いで元利銀を銀主に持參して米切手及び入目録又は本證書を回收し、之を先に發行し置きたる後刻證文と引替に米仲買に引渡し、米仲買は米切手のみを客筋に返戻す。これ後刻證文運用法の三なり。 銀主にして質物として米切手を受取ることなく、單に銀子を銀仲に渡し置くのみなるときは、銀仲より銀主に對し、銀子を預りたるを以て後刻米切手を渡すべしと契約したる證文を交付す。藩末に至りて、米仲買相互の間若しくは米仲買と銀仲との間に、この證文を利用して多額の資銀を融通せり。之を後刻證文運用法の四とす。 かくの如く後刻證文は取引上頗る利便なるものなるが故に、隨つて多く融通運轉せられしかば、寛保二年十月初めて之に對する取締法を制定し、後刻證文は隨意に發行し得といへども、若し銀仲にして債務を果さゞる時は、米仲買及び銀仲總員に於いて連帶の責任を負ふべきことを定められたりき。文政五年銀仲が提出したる起請文は左の如く、之によりて亦業務の内容を知ることを得べし。