石川の風景から生まれた アニメーション
もくじ
ONIができるまで
ONI(THUNDER GOD'S TALE)ができるまで
ひとつのアニメーション作品ができあがるまでにはキャラクターやストーリーを作るだけではなく、色彩表現やカメラワーク、音楽やSE(効果音)など多岐にわたるプロセスが存在します。
アニメーション制作のプロセスは作品によって異なることもありますが、今回はトンコハウスが制作した『ONI ~ 神々山のおなり』について、そのはじまりから完成するまでのプロセスを紹介します。
『ONI』は監督・堤大介(つつみだいすけ)が描いた最初のイラストからスタートしました。
01 「北極星」を掲げる |02 企画
01 「北極星」を掲げる
進むべき指標のことを英語で「NORTH STAR」と言ったりします。映像制作の過程では、さまざまな意見や予算、スケジュールの課題に対峙することになるため、まずは監督にとって譲れないものや指針を明確にした「北極星」を定めます。いつもどこにいても遠くに輝いて見える「北極星」のようなものがあれば、どんなことがあっても乗り切ることができるためです。『ONI』の場合、作品を通して伝えたい軸となる部分を制作スタッフの協力も得ながら監督・堤大介本人が徹底的に掘り下げ、およそ1年かけて『ONI』の「北極星」を明確にしていきました。
02 企画
多額の予算を要するハリウッドのアニメーションが出来上がるには、大きく分けて2段階のステップがあります。第1段階が、クリエイターが初期企画・構想・キャラクター設定などを配給元にプレゼンし、次のステップに進む最初の契約を獲得すること。それをディベロップメント契約と呼びます。契約後、少人数で企画をまとめプレゼンを重ねることで、第2段階のグリーンライト(本契約)へと進みます。堤とエグゼクティブ・プロデューサーのロバート・コンドウは、限られたシリーズ予算の中で動画配信での鑑賞でも「シネマチックな(映画館での体験のような)絵作り」を目指しました。全てにお金をかけなくても、限られた予算で工夫をこらせば、本格的なハリウッドのアニメーションと遜色ない映像が作れる自信がありました。
03 民俗設定 |04 キャラクター設定
03 民俗設定
『ONI』は、民話に登場する鬼や妖怪の設定を参考にしています。民族設定を考える際には歴史的背景を踏まえながらもトンコハウスならではの要素を織り交ぜていくことを意識していました。日本の民話そのものを題材にしているわけではありませんが、民話のイメージから大きく外れないように、「北極星」を考える段階から鬼伝説やかっぱ伝説などがある日本各地にたびたびリサーチの旅に出かけました。
04 キャラクター設定
堤大介が最初の『ONI』のイラストを描いたとき「おなり」と「なりどん」というキャラクターは生まれました。その時から「おなり」は「雷神に育てられた人間の女の子」という考えがあったそうです。『ONI』を制作することになり、キャラクター設定を考える上で日本にある「九十九神(つくもがみ)」という考えを参考にしました。それはあらゆるものに魂が宿るといった考えです。あらゆるものや妖怪などをモチーフにした多数の個性豊かなキャラクターが登場することで作品の魅力に繋がると考えました。また、積極的に「おなり」に関わる主要なキャラクターと、存在するだけで味わいを深める(しゃべらない、動きがない)キャラクターを制作し、メリハリをつけました。
05 世界観の設定
「神々山」は、日本古来の森を目指して制作されました。目に見える景色だけではなく、空気や匂い、森の中にいるからこそ感じられる精霊たちのような存在は『ONI』の世界観の構築には不可欠でした。堤大介と脚本家・岡田麿里は、『ONI』のストーリーを作るために屋久島(鹿児島県)まで足を運び、神々の気配を感じ取ってきました。
コンセプトアーティストである稲田雅徳、橋爪陽平は、『ONI』の舞台となる「心地よい森」を表現するために、何度も兼六園(金沢市)へ足を運び、作品制作に活かしていきました。自然のままの豊かな森に加え、丁寧に
手入れされた庭園は、「居心地の良さ」が感じられたといいます。人間の世界を描く際には、片町や近江町市場も参考にしています。
06 ストップモーション・アニメーション |07 ストーリー、脚本
06 ストップモーション・アニメーション
人形や物を少しずつ動かして撮影し、画像をつなぎ合わせ動画をつくる技法をストップモーション(コマ撮り)・アニメーションといいます。はじめは全編をストップモーションで撮影する構想でしたが、物語の終盤で表現したい映像が複雑だったため、ストップモーションでは表現しきれないことが徐々に明らかになっていきました。最後まで可能性を追求しましたが、最終的には全編を3DCGで制作するという決断に至りました。しかし、ストップモーションで制作したパイロット版におけるキャラクターの外見や動きは、3DCGで制作した本作にも大切な要素として受け継がれています。
07 ストーリー、脚本
脚本は『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』などで知られる岡田麿里が担当しました。岡田麿里は堤大介の住むアメリカ・カリフォルニア州バークレーを訪れ、トンコハウスの社風や世界観への理解を深めました。そして、堤大介と二人でお互いのことを深く語り合い信頼関係を深めたあと、本格的に脚本制作に入りました。日本語の台本をまず完成させ、次に英語版の脚本を完成させました。制作過程での脚本に関するフィードバックや変更は英語で行われたため、変更がある度に翻訳をして岡田麿里と相談し、物語をつくり上げていきました。日本語と英語の両方でネイティブな脚本を制作できることはトンコハウスの強みでもあります。
08 カメラとシネマチック |09 ストーリーボードとストーリーリール
08 カメラとシネマチック
CGアニメーションは、コンピューター上の仮想空間にモデリングされた3Dのキャラクターや物、背景をセットし、カメラの位置やアングルを決めて撮影します。堤大介は、動画配信でも劇場映画と同じように大画面で見ても伝わるような構図や光の撮り方を「シネマチック」と呼び、スタッフに意識するよう呼びかけました。カメラの動きにメリハリをつけ、動かす総量を減らせば予算縮小にもつながります。カメラアングルと動きを際立たせることで、予算は少なくても大作映画のように見せることができると考えました。ストーリーチームとカメラチームは制作初期に堤大介の選定した資料映画を参考に『ONI』のカメラスタイルを確立して行きました。
09 ストーリーボードとストーリーリール
「絵コンテ」のことをアメリカでは「ストーリーボード」と呼びます。ストーリーボードを編集し、仮の音楽や効果音、セリフを入れて「ストーリーリール」
(ビデオコンテ)といった動画を制作し、早い段階からストーリーを映像として見ていきます。そうすると、脚本上で面白いと思ったものが映像になると違和感があるなどの課題が明確になるため、物語をブラッシュアップしやすくなります。『ONI』は第1話だけで60を超えるストーリーリールの更新が行われました。
10 カラースクリプト
カラースクリプトとは色の脚本のことです。美しい絵を描くだけではなく、キャラクターやシーンで伝えたい感情を色と光で表現していきます。この表現方法はトンコハウスの強みでもあります。堤大介はピクサー時代にアートディレクターとして『トイ・ストーリー3』や『モンスターズ・ユニバーシティ』のカラースクリプトを手がけました。『ONI』では、稲田雅徳、橋爪陽平の二人がカラースクリプトを担当。「ピクサー時代の自分にもできなかったのでは」と堤大介が感心するほどの仕上がりとなりました。
11 モデリング |12 アニメーション
11 モデリング
キャラクターや背景のデザインをデジタルで立体化する作業をモデリングといいます。CGアニメーションは全てをゼロからモデリングしなければなりません。トンコハウスがデザインしたキャラクターやセットのデザインを元にファイナルルック(最終的なルック)が作られます。『ONI』のモデリングは、日本を拠点にハリウッドの実写映画なども制作してきたMegalis VFXが担当しました。モデリングの後には、キャラクターの関節を動かすための骨組みを入れる作業「リギング」が続きます。キャラクターを自然に動かすためのリギングは重要な工程で、フォルムごとに関節のあり方を考え、一体ずつ入念に行われました。
12 アニメーション
モデラーが作ったCGのキャラクターを動かす作業をアニメーションといい、キャラクターに命を吹き込むのがアニメーターです。アニメーターを統括したのは『ダム・キーパー』からトンコハウス作品の全てに参加してきた、作画監督の中村俊博。そしてアニメーションチームの8割は日本のアニメーションスタジオのマーザ・アニメーションプラネットとアニマから参加しました。ハリウッドにおける3DCGアニメーションは、よりリアルで滑らかな動きを志向する傾向にありますが、堤大介はあえて違う方向性を求めました。堤大介はストップモーション特有の完璧すぎない動きをCGで再現できないかと考え、宮崎駿らが1970-80年代に作った日本のテレビアニメを参考に、1コマ1コマのポーズを大事にしようと呼びかけました。
13 ライティング |14 エフェクト
13 ライティング
カラースクリプトで精密に設計した光のイメージを実現するため、3Dスペース上にさまざまな光源を設置する作業がライティングです。堤大介は「物語は光の見せ方で180度変わる」と考えているため、『O N I 』のライティングは作品のストーリーにおいてとても重要な工程となります。考え方は実写映画と同じで、キャラクターの動きが決まると、Megalis VFXが3Dスペース上に光を置いていきます。CG上に光を入れた後、コンポジティングという工程で、色や光の調整をして仕上げていきます。コンポジティング・スーパーバイザーのアッシュリー・モハビルをはじめとするMegalis VFXの優秀なアーティストたちによって、堤大介が目指していた光の演出が実現しました。
14 エフェクト
エフェクトとは、雨や雲、煙、そのほかのディテールの状態や変化をコンピューター上で計算して表現することを言います。例えば「おなり」が涙を流すシーンでは、水分量を計算して、涙の落ち方をシミュレーションします。チャプチャプしている「かっぱ」のお皿の水や、炎や煙の動きでもエフェクトを使用しています。
エフェクトをかければその分費用がかさむため、必要最低限のシーンを厳選します。エフェクトはMegalis VFXが最も得意とする分野で、クオリティの高さに、堤大介はたびたび驚かされました。
15 2Dアート |16 音楽とSE
15 2Dアート
3DCGプロダクションにおいて、2Dアートはとても重要な工程のひとつです。全てを3DCGで作り上げるのではなく、所々に平面的なアートを入れることで効率的に「奥行き」が加わります。たとえば、教室の壁に貼ってある子どもたちの宿題や黒板の文字や、「おなり」の家の千社札、人間の街の標識や広告など、よくみるとユーモアたっぷりな内容が描かれた2Dアートが3Dモデルに貼られています。「風太郎」の紙芝居は、2Dアートで描かれたアニメーションです。一度しか現れない背景はモデリングせずマットペイントを活用しました。トンコハウスのアーティストと共に、舩木愛子と丹保瑞香が中心となり2Dアートを描きました。
16 音楽とSE
一般的な映画作りでは、音楽は編集が終わってから作られることが多いですが、『ONI』では作曲家のザック・ジョンストンとマテオ・ロバーツが、初期段階からイメージに合うオリジナル曲を制作しました。日本を舞台とする作品として、太鼓と篠笛は日本でレコーディングを行いました。みんなが「わっしょい」「わっしょい」と叫ぶクライマックスのシーンには、トンコハウスの会員制オンライン・コミュニティ「Dirty Pals」のメンバーが参加しました。SE(効果音)はサウンドデザイナーの高木創が担当しました。音響があまりにも効果的で、最終段階で音楽の一部を取り除いたシーンさえもあったほどでした。
17 編集 |18 タイトル・ロゴ
17 編集
ストーリーリールを更新する重要な作業は、堤大介の右腕のような存在、ブラッドリー・ファーニッシュとケンドラ・ジュールが担当しました。さまざまな段階のデータをつぎはぎして作ったリールが更新されていきます。仮だった音楽、声優も完成したものに変わっていき、映像にもアニメーションがつき、色と光の演出も加わり…と、ブラッシュアップされ続け、完成系に近づいていきます。編集者は最初から最後まで監督と並走し続ける存在です。
18 タイトル・ロゴ
筆で書かれた「ONI」の文字は、アメリカ・カリフォルニア州ロサンゼルス在住の書家・山口碧生が担当しました。山口碧生に依頼したのは2つの理由からでした。1つ目の理由は『ONI』のタイトル・ロゴを日本人の力強い筆文字で表現したかったためです。2つ目の理由は、鬼を「ONI」とアルファベットで表記することについて、若い頃から外国人としてアメリカに住み、堤大介と同じような体験をした山口碧生ならば、その意図が理解できると考えたためです。
数分間のエールを
『数分間のエールを』とは
『数分間のエールを』は、MV(ミュージックビデオ)などで人気を集める映像制作チーム「Hurray(フレイ)!」が初めて挑戦した長編アニメーションです。
MV を作る高校生・朝屋彼方(あさやかなた)と歌に挫折した大人・織重夕(おりえゆう)を軸に「モノ作り」をめぐる物語が語られます。
映像統括を手がけた「Hurray!」に加え、『ラブライブ!』『ガールズバンドクライ』の花田十輝が脚本を担当。彼方の声を花江夏樹、夕の声を伊瀬茉莉也がそれぞれ演じ、劇中で夕が歌う楽曲の制作を、ボカロP(音声合成ソフトを使用した作曲家)のVIVI、歌唱をシンガーソングライターの菅原圭が務め、主題歌にはフレデリックによる書き下ろし楽曲「CYAN」が使用されました。
映像制作チーム「Hurray!」
金沢美術工芸大学出身の3名からなる、少人数の映像制作チームです。人気アーティスト「ヨルシカ」のMV をはじめ、CM やオープニング・エンディングムービーなど、多方面で数々の映像作品を手がけています。手描きアニメ、3DCG、モーショングラフィックを使用したメッセージ性の高い映像を制作しています。『数分間のエールを』では、監督をぽぷりか、副監督をおはじき、キャラクターデザイン・アートディレクターをまごつきが担当しました。
あらすじ
「何かを作りたい。自分が作ったモノで誰かの心を動かしたい」高校生の朝屋彼方は、MV の制作に没頭していた。ある夜、映像のモチーフを探して街を探索していた彼方は、雨の中でストリートライブをする女性に出会い、その歌に衝撃を受ける。「この歌のMV を作りたい、自分が待っていたのはこの曲だ」その歌声と、感情をぶつけながら歌い上げる姿に心が突き動かされた。そして翌日、彼方は教壇に立った新任教師の姿を見て驚愕する。そこにいた織重夕は前夜、彼方の心を突き動かしたミュージシャンだった。モノづくりをはじめ、その楽しさを糧に次に進む彼方と、モノづくりを諦め、その苦しさから別の道に歩き出した夕。二人の作った作品は、それぞれに何をもたらすのだろうか。
テーマと企画の変遷
「なんでモノを作るのか」
貴方が何か作る人ならなんと答えるだろう。作らない貴方なら、何を思うだろう。
僕がモノを作る理由は、ただ僕を褒めてやる為に。おまえは凄いぞと、心の底から讃える為に。
「こんな時代」と言われる日々の中、世界中の数え切れない感情が、数字が、毎日生まれては消えていく。溢れかえった人の海の中で、ゆらゆらと漂う僕らに確かなものは一つもない。
学校は楽しいだろうか。会社に不自由は無いだろうか。貴方の夢は、叶うだろうか。
僕らが必死に掴んだものは遠くに流され、現実は上手くは行かないと寂しそうに、戦ってきた人達が首を横に振る。それはきっとそうなんだろう。
でも、
それでも折れない魂になりたい。進み続ける信念を持ちたい。薄く濁った日々を超え、震えた息でも彼方を目指したい。
波に攫われてしまわないように、自分で作ったモノを支えに。
モノを作る事が僕を、貴方を直接救ってくれる事はないかもしれない。ささやかな願いすら、叶わないかもしれない。
それでも、あの長く苦しかった夜を理解してあげられるのは僕だけで。
膨大に積み上がった誰にも分からない努力を、よくやったと言ってやれるのは貴方だけだから。
モノを作る行いが、僕らの神様であってほしい。僕らを律し、僕らを励まし、そして僕らに愛されるものであってほしい。
僕の作ったモノが僕の背を押し、歩き出した僕が次の僕の背を押すモノを作っていく。
初めて何かを作った時のあの日の喜びのそのままに。
昨日の僕を乗り越え、今日の僕を追い越し、いつかの僕はどこまで行けるだろう?
それだけ考えてモノを作って。僕らが僕らを讃えたままで生きていけたなら。
現実は辛い。それは分かってる。でも、分かってるって言いながら、そんな理想を語れる人になりたい。
そんな理想がいつかの誰かの、震える背中を押せると信じてる。
二人のクリエイターが作品を作りながら自分の道を切り開いていく物語
企画初期に「Hurray!」が提出したのが①~⑥の作品要素です。これを元にバンダイナムコフィルムワークスが企画書を作成、脚本家の花田十輝に脚本協力のオファーをおこないました。これらの要素がどのように昇華され映画になったか、ぜひ本編をチェックしてください。
①主人公
・MVを作る男子高校生
・曲を作る女性の高校教師
先生は自分と男子高校生のために曲を書き、男子高校生は自分と先生のためにその曲に映像をつける。二人で作る作品は彼らの世界を変えていく。
②見終わって
何かを作る人が、この作品を見終わった後、それを続けてきたことを誇れるような作品であってほしい。何かを作らない人が、何か作ることをはじめてみたいなと思える作品であってほしい。モノを作ることを讃える映画にしたい。
③描きたいもの
何かを作る時のさまざまな要素を二人の対照的な面で見せる。
「子ども- 大人」「才能- 努力」「夢- 現実」
■男子高校生
モノ作りの純粋な楽しさ。作り上げたモノが誰かから褒めてもらえる喜び。自分を褒めてあげられる喜び。未来のことは何も分からないけど自分の力を信じて好きな道を歩こうとする無鉄砲さと意志を描きたい。
■先生
大人になってから「好きなことで生きていこうと決める」ことの難しさや怖さ。それでも自分の人生を、自分の納得のために切り開いていく強さを描きたい。
④挫折- 奮起の展開
二人で楽曲とMV を作るようになってから、二人と世界の歯車は噛み合っていく。だがモノ作りが楽しいと思い先々へ向かう矢先、それを続けていくのが困難な問題が起きる。ネガティブな何かに押さえつけられ、「こんなことならもう作るのは辞めた方がいいかもしれない」と思ってしまうが、そこでそれぞれの意志で「モノ作りを続けること」が物語をハッピーエンドへ向かわせるキーになる。
■男子高校生
「モノを作ることが自分の背を押し、自分を前に進めていく」お話でありたい。終盤で男子高校生がくじけそうな時に、支えてくれるのは自分の作ってきた作品たち。作ってきたものを振り返り、自身の道のりと成長を振り返る。何も分からないところからはじめ、ずっとずっと上手くなったじゃないか。ここで諦めたら僕はどこに辿りつくんだろう。そしてこのまま続ければ、未来の僕はどこまで行けるだろう?
■先生
「これで生きていけたらどんなによいだろう」を持って前に進む。終盤で先生がくじけそうな時、思い出すのはモノを作る楽しさ。人生は辛い、自分はこんなものだと思って生きる時間は本当に苦しい。だからこそ、今からでも。どこかで潰れてしまうとしても、自分が納得できる人生を歩みたい。心から楽しいと思える人生を生きたい。
⑤ エンターテイメントとハッピーエンド
ちゃんと分かりやすいエンターテイメントにしたい。分かりやすい外的な葛藤と、主人公二人の内的な葛藤の全てを解決するイベントを乗り越え、こうなって良かったと思えるハッピーエンドに繋がるようにしたい。「こうやってモノを作っていられたら」の理想を描く作品にしたい。
⑥ モノ作りの描写
パソコンに向かってただキーボードを叩いているだけでない、その世界に入り込んでいる表現をしたい。男子高校生が思い描くMVの世界の中では、それを一から考えて作り上げていく面白さと苦労が描かれる。キャラクターに演技を指導し、何度もそのアクションを見ては直し、小物から大きな山までを自分でひとつひとつ考え作り上げていく。膨大で途方のない時間と努力の果てにそれらは完成し、キャラクターに人格を感じる瞬間が訪れる。ただの絵ではなく、ただの映像ではなく、ひとつの世界になりえる。「自分がこの世界を作ったんだ」という達成感が得られる。
テーマが決まり描かれた最初のコンセプトアート
コンセプトテキスト、企画テーマが固まった後、まごつきが以下3点のコンセプトアートを描きました。描かれた時点で夕のデザインは確定していたものの、彼方のデザインはまだ確定前であったため、衣装含め現在のデザインとは異なっています。本作におけるコンセプトアートは、画面全体の色彩イメージをスタッフ間で共有するために描かれたもので、カラースクリプトとも呼ばれます。
テーマが決まり描かれた最初のコンセプトアート
コンセプトテキスト、企画テーマが固まった後、まごつきが以下3点のコンセプトアートを描きました。描かれた時点で夕のデザインは確定していたものの、彼方のデザインはまだ確定前であったため、衣装含め現在のデザインとは異なっています。本作におけるコンセプトアートは、画面全体の色彩イメージをスタッフ間で共有するために描かれたもので、カラースクリプトとも呼ばれます。
『数分間のエールを』で描かれる石川県の風景
『数分間のエールを』では、石川県の中でも金沢市、羽咋市が作品舞台として描かれました。メインスタッフである「Hurray!」のぽぷりか、おはじき、まごつきは、全員が金沢美術工芸大学の出身であり、中でも監督のぽぷりかは石川県出身。作品舞台選定に際して「Hurray!」三名全員が共通認識できる場所を考えたところ、共に大学時代を過ごした石川県がもっとも共通認識できるのではということで、作品舞台は石川県に決定しました。作中では金沢市・羽咋市の代表的なロケーションが描写されるほか、実際に生活している人にも共感を得られる要素を入れたいと考え、“雨” の描写を取り入れています。ここからは、『数分間のエールを』本編に登場した石川県の風景を紹介していきます。
① 金沢駅前(金沢市)
作品冒頭、主人公の彼方とヒロインの夕の語りが明けると同時に、金沢駅と共に特徴的な鼓門が描かれた景色から物語が動き出します。彼方が通う学校も金沢市の学校という設定です。彼方と夕の出会いも、雨の金沢駅前での路上ライブがきっかけとなっていました。
② 百万石通り(金沢市)
MV 制作のモチーフを探す彼方が訪れた、印象的な交差点。こちらの景色が描かれるシーンでは雨が降っており、石川県らしい天候が表現されています。
③ 大乗寺丘陵公園(金沢市)
作中で夕が頻繁に訪れている公園。MV制作のため、楽曲使用を依頼したい彼方が夕を探す際に訪れ、以降は二人が話をするための場所となっていました。実際の公園にはイラストに描かれた電灯は存在しませんが、演出意図のために電灯が描きこまれました。
④ 片町(金沢市)、⑤河北郡内灘町
軽音部員の中川萠美とのやりとりをきっかけに、物語のクライマックスで彼方が千里浜へ向かう際に描かれました。金沢市内に存在する高校から、片町(香林坊交差点)を抜け、内灘町を経由して千里浜を自転車で駆け抜けます。
⑥ 千里浜(羽咋市)
本作を代表するシーンで描かれた千里浜の風景。本編のほか、石川県観光PRの取り組みとして制作された、まごつきによる描き下ろしポスターにも描かれています。
トンコハウス
トンコハウス スタジオ紹介
2012年、当時ピクサーのアートディレクターだった、堤大介とロバート・コンドウの二人は、彼らの仕事の枠を超えた映画制作の経験のために、自分たちで脚本を書き、短編映画を一本作ることにしました。
二人の初監督作品『ダム・キーパー』は、彼らの期待を遥かに超える評価を集めました。チームを作り、仲間たちと共に映画を完成させるという、人生を変えてしまうほどの経験は、彼らの現状を大きく見直し、彼らが「なぜ?」と、自らに問う事にこだわり始めるきっかけとなります。
結果、二人はピクサーという快適な環境を飛び出し、未知の領域でも、常に自分たちが学び続けられる道を選ぶことを決めました。
2014年7月、ピクサーを退社した堤大介とロバート・コンドウは、世界の人々にストーリーを伝えながら、クリエイターが成長できる場として、トンコハウスを立ち上げました。トンコハウスは現在、アメリカ(カリフォルニア州バークレー)と日本(金沢)に拠点を構え、ふたつの国のクリエイターをつなぎ、それぞれの文化を生かした作品づくりを行なっています。
2014 短編映画『ダム・キーパー』を公開
2014 トンコハウスを設立
2015 短編映画『ダム・キーパー』、米アカデミー賞短編アニメーション部門にノミネート 画集『The Art of The Dam Keeper』を出版
2016 短編映画『むーむ』を公開 初の展覧会「トンコハウス展『ダム・キーパー』の旅」を東京・銀座にて開催 以降、宮城県石巻市(2017年)、福岡県福岡市(2018年)に巡回
2017 『ピッグー丘の上のダム・キーパー』をHuluにて配信開始 グラフィックのベル『ダム・キーパー』全3巻を2017年から2019年にかけて出版
2018 NHK『オドモアニメ』を公開。
2019 トンコハウスジャパン金沢スタジオを開設 「トンコハウス映画祭」を東京にて開催 「Tonko House Animation Exhibition」を韓国・ソウルで開催 絵本『ダム・キーパー』を出版
2020 『Acorns』をYoutubeにて公開 「トンコハウス映画祭 第二回」をオンラインにて開催
2022 Netflixシリーズ『ONI~神々山のおなり』を配信開始
2023 「ONI展」を東京・立川にて開催 図録『The Art of ONI(『ONIのすべて~トンコハウスを堤大介、旅の途中~』)を』出版 Netflixシリーズ『ONI~神々山のななり』、米アニー賞で2部門受賞し、米エミー賞でも3部門で受賞
2024 コマ撮り短編映画『ボトルジョージ』、各国映画祭にて上映・ノミネート 「ほぼ日主催のお誕生会型展覧会 トンコハウス10周年おめでとう!展」を東京・渋谷にて開催 「Summer Studio 2024 トンコハウスとつくるワークショップ・展覧会」を東京・丸の内にて開催
トンコハウスのアニメーション作品
短編映画『ダム・キーパー』
堤大介とロバート・コンドウの初監督作品であり、トンコハウス設立のきっかけとなった作品。大気汚染におおわれた世界。内気な少年・ピッグはイジメにあいながらも、風車をうごかし大気汚染から街を守っていた。ある日、キツネの転校生と出会い、少年・ピッグの人生は大きく変わっていく。
『ONI ~ 神々山のおなり』
堤大介にとって初の長編アニメーション監督作品。日本の民話に登場する神さまや妖怪たちの世界で、自由奔放に生きるおてんば娘・おなり。伝説の英雄に憧れ稽古に励むが、父親のなりどんはヘンテコな神様で何も教えてくれない。古来から山の神々が恐れる「ONI」の脅威が迫り来る中、おなりはまだ知らない自身の真実と向き合わなければならない。
短編映画『ムーム』
川村元気、益子悠紀の絵本『ムーム』( 白泉社) が原作の短編アニメーション映画。捨てられたモノに宿っている「思い出」が存在する不思議な世界。「思い出」は、準備ができるとモノから解き放たれるが、ムームは解き放たれずにいる「思い出」のキャラクター。ある日、ムームは同じようにモノから解き放たれない「思い出」の女の子に出会う。
『ピッグ - 丘の上のダム・キーパー』
トンコハウスの代表作・短編映画『ダム・キーパー』のスピンオフ。大気汚染におおわれた世界を守る、父と二人暮らしのピッグ。突然、父が旅に出てしまった…。一人ぼっちとなったピッグの日常をコミカルに、そしてときに切なく描く。日々の中で友情や発見、学びを通し、父を探したいという思いと、街を守るという責任との間で、迷い、悩みながらも育っていく。
『Acorns』
トンコハウスのスタジオがある街、バークレーを舞台にどんぐりたちと一緒に冒険していく作品。小さなどんぐり・ケラ、パーバ、ホンドの三人は大きな木になるための旅に出る。さまざまな困難を乗り越えて、芽吹くのに相応しい、よい土のある公園を見つける3 人。しかし、小さなどんぐりたちは思わぬ出来事に遭遇することになる。
短編映画『Bottle George』
堤大介が監督、脚本を担当。トンコハウスのアーティストがストーリー制作、キャラクターや世界観などのアート制作等を務めたコマ撮り短編映画。瓶のなかに閉じ込められたジョージと幼い人間の少女・チャコの関係を描く。チャコはアルコール依存症の父親に怯えながらも、ネコと共に貧しくも強く生きている。人の中に潜む光と闇を描く、ちょっと不思議な小さな物語。
ダム・キーパー
ダム・キーパー
2014年|18分
監督 堤大介、ロバート・コンドウ
プロデューサー メーガン・バーテル、ダンカン・ラムジー
編集 ブラッドリー・ファーニッシュ
作画監督 エリック・オー
音楽 ザック・ジョンストン&マテオ・ロバーツ
堤大介とロバート・コンドウの初監督作品であり、トンコハウスのデビュー作品。
二人が初めてメガホンをとった本作は、2014年ベルリン国際映画祭で公式上映され、世界中の国際映画祭で25もの賞を受賞。2015年には、米アカデミー賞短編アニメーション部門にノミネートされました。
あらすじ
大気汚染におおわれた世界に、風車がついた大きなダムによって、汚染された空気から守られた小さな街があった。
風車の家に一人で暮らす内気な少年・ピッグは、イジメにあいながらも、日々、歯車じかけの風車を一日も欠かさず動かし、ダム・キーパーとして街を守っていた。
ある日、彼の学校にキツネの転校生がやってくる。その出会いは、少年の人生を大きく変えるきっかけとなる。
クリエイターからのひとこと
『ダム・キーパー』は、ピクサーでアートディレクターをしていたとき、休日に仲間たちと自主制作した初監督作品です。心の中の闇との向き合い方を描いたお話です。(堤大介、ロバート・コンドウ)
ONI~神々山のおなり
ONI~神々山のおなり
2022年|154分|全4話
原案・監督 堤大介
脚本 岡田麿里
プロデューサー サラ・K・サンプソン
音楽 ザック・ジョンストン&マテオ・ロバーツ
CG制作 Megalis VFX、マーザ・アニメーションプラネット、アニマ
堤大介監督による長編フルCGアニメーション。見えないものに恐れを抱く心の闇と、そこに差し込む真実の光。
人々の本質に迫るテーマでありならがらも、巧みな色彩表現と散りばめられたユーモアで、世代や国境を越えて誰もが楽しめるストーリーとなっている。
2023年には“アニメーション界のアカデミー賞”と称される映画賞・米アニー賞で2部門受賞。米エミー賞でも3部門で受賞。
あらすじ
八百万の神々や妖怪たちがすむ、神々山。
数か月後に迫った“ONI”の脅威に備え、神々たちは技に磨きをかけていた。
伝説の“グレートヒーロー”に憧れるおてんば娘・おなりも、日々けいこに励むが、特別な力が一向に現れない。
おどけてばかりで何も教えてくれないヘンテコな父親・なりどん。次々と力を開花させていく、友人たち。
理想と現実の間で葛藤するおなりに、新たな真実が立ちはだかる。
クリエイターからのひとこと
僕たちは“知らないもの”のことを“コワい”と思ってしまいます。渡米し、僕自身がまわりとは違う“よそ者”になったときに、僕自身も“自分と違うもの”を恐れていたことに気づきました。その気持ちに向き合い、この作品を制作しました。(堤大介)
『ONI』では二人のアーティストがカラースクリプトなどを担当し、その世界観を作り上げていきました。
橋爪陽平 コンセプトアーティスト
Netflix シリーズ『GO! GO! コリー・カーソン』でコンセプトアートを務め、絵本『ダム・キーパー』ではペイントを担当。Netflix シリーズ『ONI ~ 神々山のおなり』では、コンセプトアーティストとしてカラースクリプトなどを手がけ、米アニー賞にてベスト・プロダクション・デザイン賞(テレビ/メディア部門)を受賞。
稲田雅徳 コンセプトアーティスト
Netflix シリーズ『GO! GO! コリー・カーソン』でコンセプトアートを務め、絵本『ダム・キーパー』ではペイントを担当。Netflix シリーズ『ONI ~ 神々山のおなり』では、コンセプトアーティストとしてカラースクリプトなどを手がけ、米アニー賞にてベスト・プロダクション・デザイン賞(テレビ/メディア部門)を受賞。米エミー賞にてベスト・カラー・デザイン賞を受賞。
花咲くいろは
花咲くいろは(金沢市)
『花咲くいろは』は、P.A.WORKS(富山県)制作のアニメ作品です。2011年にTV放送され、2013年には劇場版も公開されました。
東京育ちの女子高生・松前緒花(おはな)は、母の夜逃げをきっかけとして、祖母が経営する湯乃鷺(ゆのさぎ)温泉にある旅館「喜翆荘(きっすいそう)」に身を寄せます。そこで仲居見習いとして働きながら学校に通い、厳しい祖母や個性豊かな従業員たちと関わり合いながら成長していきます。この湯乃鷺温泉のモデルとなったのが、金沢市にある湯涌温泉です。
湯涌温泉は金沢市湯涌町の緑豊かな山間にあり、「金沢の奥座敷」と呼ばれます。
総湯「白鷺の湯」は、養老二年(718年ごろ)、農夫が泉に身を浸す白鷺を見て湯が湧くのを発見したことが発祥だと伝えられています。江戸時代には加賀藩歴代藩主が湯治に訪れ、明治には詩人画家・竹久夢二が、恋人の笠井彦乃(かさいひこの)と約一か月の甘いひとときを過ごしました。
『花咲くいろは』作中には、湯涌温泉の施設や街並みをモデルに描かれたシーンが数多くあります。現在でも湯涌には、アニメに活かされた情緒あふれる風景と温泉を楽しみに、多くの『花咲くいろは』ファンが訪れています。
『花咲くいろは』の舞台となった金沢市の風景
『花咲くいろは』では、湯涌温泉以外にも金沢市内のさまざまな場所が描かれています。
緒花や喜翆荘従業員の鶴来民子(つるぎみんこ)、押水菜子(おしみずなこ)が通う香林高校は、1972年に竣工した金沢美術工芸大学の旧校舎を参考にして描かれています。長年学生たちに親しまれた校舎ですが、老朽化のため2023年に移転となり、現在は解体が進められています。
ほかにも、作中に登場する結婚式場はしいのき迎賓館、買い出し先の市場は近江町市場、登場人物が通る橋は犀川大橋をモデルに描かれているなど、金沢市民にとっては親しみ深い風景が満載です。
物語のクライマックスで描かれる「ぼんぼり祭り」は、神無月(10月)に童女の姿の神様が出雲へ向かう際、道に迷わないようにぼんぼりで照らし出すという祭りです。願いごとを書いた「のぞみ札」をぼんぼりに下げておくと、神様が叶えてくれると言われています。
この美しい祭りを実際に開催しようと、湯涌温泉観光協会が中心となって企画し、アニメの製作委員会や市民の協力を得て実現。2011年、浅野川水害の復興3周年記念イベントとして「湯涌ぼんぼり祭り」が開催されました。台風や感染症の影響で中止となった年もありましたが、2025年には第13回の開催を迎えます。アニメ発の祭りが地域の祭りとして定着した、珍しい例となりました。
君は放課後インソムニア
君は放課後インソムニア(七尾市)・舞台となった七尾市の風景
『君は放課後インソムニア』は『ビッグコミックスピリッツ』(小学館)で2019年~2023年に連載されたオジロマコトによる漫画作品で、2023年にTVアニメ化されました。
不眠症に悩む高校生・中見丸太(なかみがんた)は、文化祭の準備を抜け出して忍び込んだ物置になっている天文台で、同じく不眠症の曲伊咲(まがりいさき)と出会い、二人は秘密の場所を共有することに・・・。
七尾市を舞台に不眠症(インソムニア)という悩みを抱える高校生二人の交流を描いています。
七尾市に流れる「御祓川(みそぎがわ)」には、七つの橋が架かっています。
写真に写っている赤い橋は「仙対橋(せんたいばし)」。「まつりの橋」とも呼ばれ、5月の青柏祭(せいはくさい)ではここに「でか山」という3台の大きな山車がそろいます。他にも、「亀橋」や「慶応橋」、「長正橋」などがあります。作中ではこの七つの橋を想い人と無言で渡りきると両想いになれるという伝説が描かれています。
能登食祭市場は、新鮮な魚介類をはじめ、能登の名産品・工芸品を購入できる施設です。和倉温泉や能登島にも近く、観光客や地元の人の活気にあふれています。1階には、能登銘産・工芸館と鮮魚や干物などを扱う「能登生鮮市場」、2階には「能登グルメ館」があります。「名物浜焼きコーナー」では、新鮮な魚介類をその場で焼いて食べることができます。アニメでは「夜のお楽しみ会」の終点になっており、伊咲たちが店内で浜焼きを食べていました。
クリエイター紹介・アニメ監督
池田ユウキ
石川県金沢市出身。
高校卒業後一度地元の工場に就職するも、アニメが好きだったのと、作ったものをみんなに見てもらいたいという想いから上京してアニメ業界へ。専門学校を卒業後、アニメーション制作スタジオである株式会社ライデンフィルムに入社し演出家としてデビューし、『君は放課後インソムニア』で初監督作日を手掛けた。本人が石川出身ということもあり、石川の空気感や聖地の再限度は特に意識して作った部分である。
アニメ監督の仕事
アニメ監督の仕事内容は作品の責任者です。
カメラの位置、キャラクターのお芝居を見るのはもちろんですが、背景やキャラクターの色味や撮影処理、最近では3DCGなども決め込み、各作業者に指示を出していくお仕事です。
スキップとローファー
スキップとローファー(珠洲市)
『スキップとローファー』は、講談社『月刊アフタヌーン』で連載中の高松美咲による漫画作品です。2023年にTVアニメ化され、2025年現在アニメ第2期の制作も決定しています。石川県のはしっこ「凧島町(いかじまちょう)」で生まれ育った主人公・岩倉美津未(いわくらみつみ)が、官僚を目指して東京の高校に進学し、クラスメイトたちと互いに影響を与え合いながら仲を深めて成長していくスクールライフ・コメディです。この「凧島町」のモデルとなったのが、珠洲市蛸島町です。
『スキップとローファー』の主な舞台は東京ですが、美津未の家族や、幼なじみの遠山文乃は凧島町に住んでいます。家族や文乃が登場するシーンや帰省のシーンでは、凧島町に舞台がうつり、珠洲市の実際の風景や方言での会話が描かれます。いずれも優しく温かみのある描き方をされています。美津未の目標は、官僚になり、過疎対策に貢献すること。「定年後は地元に戻り市長を務める」「死んだらお骨は日本海に撒いてもらう」と、遠い将来の人生設計までしています。凧島町は美津未の原点であり、守っていきたい場所なのです。
舞台となった珠洲市の風景
『スキップとローファー』に登場する珠洲市の風景で、特に印象的なのが海です。珠洲市は能登半島の最北端に位置し、広く海に接しています。そのため人々の暮らしと海は密接に結びついており、珠洲市を描くうえで欠かすことができません。作中では、国定公園特別地域に指定されている木ノ浦海岸をはじめ、県内有数の透明度を誇る鉢ヶ崎海岸や、北前船の寄港地であった寺家漁港付近の風景などが描かれました。緑に囲まれた美しい海の画からは、珠洲市の豊かな里山里海の魅力を感じることができます。
美津未が上京するシーンでは、「凧島駅」が登場します。美津未は友人たちに見送られながら列車に乗りますが、それは想像の中のできごとで、実際には凧島駅は廃駅となっていました。モデルとなった蛸島駅も、現在は廃駅となっています。1964 年に旧国鉄の駅として開業し、その後JR西日本、のと鉄道能登線を経て、能登線の廃線にともない2005年に廃止されました。駅としての機能は失いましたが、「奥能登国際芸術祭」ではアート作品の展示場所として活用され、作品は今も残されています。
コンセプト・スケッチなどの展示
『ONI ~ 神々山のおなり』背景美術
『ONI ~ 神々山のおなり』のコンセプト・スケッチ、各キャラクターの表情スケッチ、背景のイメージボードなども展示しました。
堤大介監督による『ONI ~ 神々山のおなり』のスケッチブック
『数分間のエールを』でキャラクターデザイン・アートディレクターを担当した、おはじき氏によるスケッチブック「外崎大輔 No.51」
展示の様子
企画展で紹介されたアニメーション作品をご覧になったことがある方はもちろん、ご覧になったことがない方も、作品の舞台となったそれぞれの土地の魅力を再発見したり、アニメーション作品の作成過程を垣間見ることができる展示となりました。